「消毒」とはなんでしょうか?
怪我したときには、マキロンなどの消毒薬、
外出時に手を洗えないときには、手指用のスプレー式消毒、
まな板やスポンジの消毒用洗剤、
哺乳瓶にはミルトンなどの消毒薬。
それぞれの用途の製品が薬局にはたくさん並んでいます。
そして、お洗濯のときの消毒方法としては、ハイターなどの塩素系か酸素系漂白剤、そして日光による消毒が一般的ですね。
でも、どれくらいの量のハイターを使えば、どんな菌がどの程度殺すことができるのか?いったい日光にどの程度干せばよいのか?ということを、わかりやすく説明してくれる資料がなかなかありません。
ここでは私が調べた、消毒に関する情報をお伝えしていきたいと思います。
消毒というのは、熱や消毒薬などの方法で、生存する微生物の数を減らすためにもちいられる処置方法です。これに対して、「滅菌」というのはすべての微生物を殺して、取り除き、無菌状態にすることです。
私たちが日常必要な「消毒」は、病気にならない程度に、細菌やウイルスなどを殺すことであって、何もすべてを無菌状態にすることではありません。
けれど、どんな消毒方法を使えば、一体どの程度までそれらの菌を、殺して、安全だといえるのでしょうか。
私は、たとえばハイターを使うとき、
「これでどの程度キレイになるんだろう。。。ハイターは強力そうだから、この半分の量にしてもいいのかな??」
と思ったり、また、オムツを日光に当てて干すときに、
「今日は曇っているけど、これでも殺菌効果はあるのかしら??」
などなど、いつもなんとなくギモンに感じていました。
すべての菌を殺す「滅菌」が必要なわけではないけれど、ちょっとした日常の知識として、これらのギモンを解決したい。。。そこで、ここでは、消毒を目的として私たちがお洗濯に日常的に使う、ハイター、酸素系漂白剤、熱水、そして日光消毒についてそれぞれ調べてみました。
1.ハイター
ハイターというのは、次亜塩素酸ナトリウムですが、濃度と時間によっては、すべての微生物に有効な、すぐれた消毒剤なのです。ちなみに哺乳瓶消毒のミルトンも次亜塩素酸ナトリウムです。私たちが、消毒したい「バイキン」、つまり微生物は、その種類によって、消毒薬に対する強さが異なります。
下の順番で、左側ほど、熱や消毒薬に対して強い、殺しにくい菌です。
1.細菌芽胞 >2.結核菌・ウイルス >3.糸状真菌 >4.一般細菌・酵母性真菌
一番左側の細菌芽胞、というのがもっとも手ごわく、食中毒となるセレウス菌や、ボツリヌス菌、また納豆菌も、芽胞をつくる細菌です。きわめて耐久性が高く、なかなか殺せません。消毒、というのは一般的には芽胞までは殺せない範囲なのです。
2番目のウイルスとは、細菌よりもっと小さい非生物ですが、インフルエンザやノロウイルス、などをよく耳にしますね。ポリオもウイルスです。ウイルスによっては、?程度の抵抗性しかないものもあります。結核菌は、細菌なのですが、4番目の一般細菌に比べて、きわめて対抗性が強いのです。
3番目と4番目の両方にあげられる「真菌」というのは、カビやきのこの仲間です。繁殖の仕方によって、糸状真菌や、酵母性真菌と呼ばれます。おむつやタオル、よだれかけなどを、汚れたまま放っておいたときにできるピンク色のものは、4番目の酵母性のカビ(真菌)です。
大腸菌やO-157なども4番目の一般細菌に含まれます。
1番目から4番目まですべてに対抗できるのが、ハイターやミルトンなどに含まれる、次亜塩素酸ナトリウム。
2番目から4番目までに対抗できるのが、アルコール消毒。
そして4番目のみに対抗できるのが、両面界面活性剤です。
両性界面活性剤というのは、一部の洗剤やシャンプーなどに含まれる成分で、トイレの洗面所に置かれている緑色の液体石けんも、両性界面活性剤の一種です。
弱いながらも殺菌作用がある洗剤なのです。
□どのくらいの量のハイターを使えばいいの?
ハイターのパッケージには、衣料の除菌の場合、「洗濯機に入れて洗う場合は、水30リットルに対してハイター70ミリリットル」
「洗い桶水5リットルに対してハイター12ミリリットルで洗う」、
と書いてあります。市販のハイターの塩素濃度を約5%とすると、これらは約0.01%の次亜塩素酸ナトリウムの希釈液ということになります。
またシミ漂白のつけ置きの場合は、「1リットルに10ミリリットル・30分くらい(2時間以内)」とパッケージにはかいてあります。これは0.05%の希釈液ということになります。
一般的な除菌には0.01%、ひどい汚れには0.05%。パッケージに書いてあるこれらの濃度にはどの程度の殺菌力があるのでしょうか?
次亜塩素酸は、還元されるときの酸化作用によって、細菌やウイルスの構成を破壊しますが、アルコールでもハイターでも、日光でも、どんな消毒薬であっても、つけた瞬間一瞬で菌が殺せるということはありません。また菌の種類によってそれぞれ抵抗性も違います。
たとえば腸チフス菌であれば、0.01から0.1%の希釈液に30分浸漬する必要があります。ところが、ポリオウイルスであれば、それよりも若干高濃度にしないと、しっかり消毒できない場合があります。腸チフス菌よりもポリオウイルスのほうが、手強いわけです。
ここで、先ほどのパッケージの0.01%の希釈液では、30分の漬け置きでは、腸チフスとポリオ、どちらに対しても、それらの病気の感染者が寝ていたシーツの消毒には、低めの濃度、特にポリオの場合は足りない量だということがわかります。
パッケージの0.01%というのはその程度の「弱さ」の程度の消毒です。
ですが、家庭においては、もちろん病院のようにする必要はありません。すべての菌を殺すために、高濃度の消毒を頻繁にやれば、ハイターによる塩素の害が大きくなる危険性もあります。次亜塩素酸の酸化作用によって、洗濯中に皮膚に触れてしまうと、皮膚の細胞まで破壊されて、手肌を傷めますし、高濃度にすればするほど、「しっかり塩素を洗い落とす」ことが必要になってきます。
また、洗濯する衣類そのものや容器なども傷めます。
一般細菌の消毒や、特に、病原菌に感染した人が使ったあとに使用するわけではない家庭での場合、0.01%で十分なわけです。
漬け置き時間についても、必ずしも30分必要ではないかもしれません。浸け置く時間が長いほど、もちろん衣類へのダメージは大きくなります。けれども、どんな消毒液でも、つけた瞬間には消毒できません。5分は漬け置きしましょう。
また、ハイターによる消毒効果というのは、汚れがあると、格段におちてしまいます。有機物が混入すると、すぐに酸化してしまい、濃度が低下してしまうからです。
効果的な使用方法としては、いったん汚れを落としてしまったあとで使用することです。
まとめると、、、
○ ハイターのパッケージに書かれた2種類の濃度は、
「衣類の除菌消臭」用:(0.01%の次亜塩素酸希釈液となります。)
普段はこれを使う。30分の付け置きすれば、殺せる一般細菌の範囲が広がるが、ウイルスに対しては不十分な場合もある。
「シミ」用:(0.05%の次亜塩素酸希釈液となります。)
ウイルスも消毒できる濃度。5分の付け置きでも、効果がある。
2. 酸素系漂白剤
過酸化水素イオンの酸化作用により、汚れを分解したり、菌を殺したりします。過酸化水素は、オキシドールとして殺菌消毒用に薬としても使われます。
粉の酸素系漂白剤のほうが、液体のものより強力ですが、粉のものも過酸化水素からできる、過炭酸ナトリウムからできています。
水よりも50度程度のお湯で使うのが、効果が高いです。
液体酸素系漂白剤は、もっともポピュラーな漂白剤ですが、主成分は、過酸化水素で消毒用のオキシドールと同じです。過酸化水素の濃度は、オキシドールが約3%、液体酸素系漂白剤は3%?5%の濃度で洗剤や助剤などが入っています。
傷口の消毒用に使われるオキシドールは、?の一般細菌にのみ有効で、真菌やウイルスなどに対しては、通常の使用方法では有効ではありません。
つまり、お洗濯用としては、このオキシドール程度の過酸化水素を、全体漂白用に、パッケージに書かれた割合で100倍、1000倍に薄めて使うわけですので、殺菌力としては十分でない場合が多いと考えられます。
ただし、オキシドールは、傷口に直接かけても大丈夫なくらいの安全な薬品です。同じ成分である酸素系漂白剤は、布おむつの一般的な消毒として使うには、もっとも安心で使いやすいのではないかと思います。
私が、ハイターや酸素系漂白剤について調べてみて思ったのは、「パッケージに表示されている分量というのは、意外と低いものなんだ」ということです。それまでは、体に悪いような気がして、パッケージに表示されている濃度よりも、薄くして使っていたのですが、薄くして気休めに多用するよりも、きっちり分量を守って使うほうが、消毒には効果的であるということがわかりました。
また、乱用を防ぐためにも、塩素系、酸素系どちらであっても、汚れを落としたあとに、使用することが効果を高める上で大切です。
3.熱水消毒
熱水による消毒というのも、安全で有効な消毒方法です。
一般的に、80度で10分すれば、芽胞を除くほとんどの最近が死滅しますが、70度で30秒であっても、たとえば0-157のように、消毒薬にも熱水にも弱い細菌は死滅します。
温度を上げるともっと短時間でも有効です。例えば同じ0-157でも80度では5秒間の熱水で死滅します。
ノロウイルスは消毒薬がやや効きにくい、ウイルスです。80度で10分の熱水が有効です。その他
セラチア菌(一般細菌):70度30秒間・80度5秒間
ポリオ:80度10分間
4.日光消毒について
紫外線は、生物の細胞のDNAを傷つけ、破壊します。
紫外線には殺菌作用があることはよく知られていますが、いったいどのくらいの日に当てればいいのでしょうか?
殺菌力というのは、光線の放射量に比例し、また放射時間にも比例します。
日光の場合、放射量が多い少ないを数値ではかることは私たちにはできませんが、弱い日差しよりも、強い日差し、1時間よりも2時間のほうが、よく殺菌されます。
屋外であっても、陰であれば直射の場合の5割に満たない紫外線しか受けられません。影での物干しは消毒には不利です。直接紫外線が受けられないため、殺菌作用は低いのです。
また、よく日があたっていても、屋内も消毒には不利です。
地表にとどく紫外線にはA波とB波がありますが、屋内のガラス越しでは、紫外線B波は多くがガラスに吸収されてしまいます。紫外線A波は、ガラスを通過しますが、A波は殺菌力が低く、消毒にはむきません。紫外線による殺菌はすべての菌類に対して有効ですが、菌の種類や環境によって、死滅させるための紫外線の必要量は異なります。
例えば、菌を死滅するために必要な殺菌線量が実験によってわかっています。
大腸菌は5.4 mJ/cm2、コレラ菌の場合は10.2mJ/cm2、ポリオウイルス12.0 mJ/cm2、ロタウイルス24.0 mJ/cm2、ある種のかびなら、34.2 mJ/cm2、の紫外線放射が必要です。そして、それらの必要な放射線量と、実際の日光の放射線量を比べてみましょう。一日の紫外線B波の量は、たとえば関東の夏場で25 kJ/m2(2.5mJ/cm2)、冬はこの1/3以下です。
ここから考えると、真夏は、一日外に干しておけば、ここにあげた菌は、ある種のかび以外は日光消毒のみですべて死滅するということがわかります。但し冬場は放射線量が1/3にも減ってしまうので、ここにあげた菌では、大腸菌以外の死滅には十分でない場合が多いといえます。
ですが家庭においては、菌を0にまでは死滅させる必要はないので、冬場であっても、紫外線の一番強い時間、10時から15時までの間しっかり日に当てれば、通常の場合であれば十分消毒できます。
日光に十分な時間当てられない場合や、家族が何かの病気に感染した場合は、酸素系・塩素系の漂白剤を適宜使うことをオススメいたします。
<参考文献>
「紫外線Q&A」シーエムシー出版
「プラクティカル滅菌・消毒」メティカ出版
「消毒・滅菌・感染防止のQ&A」照林社
「消毒・殺菌・抗菌バイブル」大泉書店
「消毒と滅菌のガイドライン」へるす出版
環境省「紫外線環境保険マニュアル2008」
続きはただいま作成中です。
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