■どんな洗剤を使えばいいの?
赤ちゃんの衣類を洗う専用の洗剤が、たくさん売っています。
あまりにもたくさんいろんなものが売っているので、私たちは、「今使っている大人と一緒の洗剤でいいの?」
「赤ちゃん用のものにしなきゃいけないの??」と悩んでしまいます。
なぜ赤ちゃん用のものがあるかというと、それは大人用の洗剤で洗った衣服(肌着・オムツ)にかぶれる「洗濯かぶれ」を起こす場合があるからです。
赤ちゃんが、洗剤に含まれるある成分(防腐剤・香料・着色剤など)に対して、アレルギー体質である場合もあります。一度で大丈夫であっても毎日使っているうちに、少しずつ皮膚に影響がでてきたりもします。
アトピーというのもアレルギーの一種です。食べ物、金属、化学物質などなんらかの物質に、体の抗体が異常反応し、皮膚炎を起こします。皮膚表面だけではなく、内臓まで炎症を起こす場合もあります。
赤ちゃんがアトピーである可能性がある場合はもちろんですが、そうでなくても新生児のデリケートなお肌への刺激をなるべくなくすよう、添加物が少なく、肌への刺激が低い成分を使った洗剤が売っているのです。
けれど、「肌にやさしい」(肌への刺激が低い)のと、「汚れをしっかり落とす」、というのは決して両立しないことなのです。「肌にやさしく、汚れもしっかりおとします」というのはメーカーのうたい文句ではありますが、実現は難しく、そのためメーカーは次々と新製品を開発します。基本的に、肌にやさしければやさしいほど、汚れについては落ちにくい洗剤になるのです。私たちのお肌を守る成分と、汚れの成分が似ているものであるため、それは当然のことと言えます。
ですが、肌にやさしいものを使いたいからといっても、汚れがきちんと落ちていないと、不衛生ですし、残った汚れもまたかぶれの原因にもなってしまいます。
私の場合は、最初は、ベビー用の洗剤を用意しました。そして一本使い切ったあとは、
特に、洗剤による異常が見受けられなかったので、徐々に、大人と一緒の洗剤に移行しました。
洗剤を使う上で一番気をつけること、それは大人用の洗剤であろうとベビー用洗剤であろうと、しっかり汚れをおとし、そして洗剤をしっかりすすぎ、残さないことです。
■なぜ洗剤でかぶれるの?
「かぶれる」というのは、皮膚がカサカサになったり赤くなったり、なんらかのアレルギー反応を起こしている状態です。
どうして、キレイに汚れを落としてくれるはずの洗剤にかぶれてしまうのでしょうか?
洗剤(せっけんも合成洗剤も)には界面活性剤が含まれており、それが、油分や細かな汚れ成分を衣服からひっぱりはがす働きで汚れを落とすわけです。けれど、汚れをよく落とす洗剤が皮膚にくっつくと、皮膚の必要な油分までひっぱりはがしてしまうのです。皮膚表面の油分がなくなるというのは、肌がカサカサな状態になるということですが、肌にとっては危険な状態で、洗剤の成分が刺激物となって作用します。それで、皮膚が赤くなったり、湿疹が出たりします。
洗剤はもちろんすすいで流して使うものですが、流さずに洗剤を毎日お肌に塗っていたとしたら、肌がボロボロになってしまうことが、マウスを使った実験でわかっています。石けんのほうが、皮膚の炎症が少ないですが、石けんであっても、直接塗り続けていれば、お肌は荒れます。ということは、洗剤がすすぎ足りず、皮膚にくっついているのは、非常に皮膚に悪いということです。
■石けんと洗剤は違うの?
赤ちゃんの沐浴を教えてもらうとき、多くの産院や育児指導では、石けんで赤ちゃんを洗います。
ところが、お店に行けば、赤ちゃん用の沐浴剤がたくさん売っています。
石けんでいいの?それとも沐浴剤?どっちがいいの??どう違うの??
と、悩まれるママは多いと思います。洗剤には、石けんと合成洗剤の2種類があります。
石けんは、油脂とアルカリ剤を合成させてできるもの。合成洗剤は石けん以外の洗剤をすべて指します。
石けんも、合成洗剤も、汚れを落とすしくみは、その主成分の界面活性剤の力によるものです。汚れを衣服からひっぱりはがして、水中に浮かせてしまいます。
合成洗剤も、石けんも、水で流さずに、肌に塗りこんでおくと、肌が荒れます。ですが、その荒れ方は石けんの方が、かなりマシです。メダカなどの魚類も、洗剤を溶かした水よりも、石けんの水の方が長く生きます。また、微生物による分解のされやすさも、石けんのほうが優れています。誤飲したときも毒性が低いのです。
また、古くから石けんは使われており、合成洗剤に入るさまざまな成分が本当に安全か、という検証が素人にはなかなかできないため、「石けん」というと成分が比較的はっきりしており、その意味で安心です。
赤ちゃんの沐浴用にも、さまざまなタイプが売られていますが、迷うようでしたら、いろんな香料や添加物の入っていない、「普通の石けん」を使っておくのがいいでしょう。
■アルカリ洗剤ってなに??
衣類用の洗剤には、弱アルカリ洗剤と、中性洗剤があります。
水の中にマイナスイオン(水酸イオン)を増やすことによって、マイナス同士が反発し、汚れを落としやすくなります。
そして、皮脂汚れにもまた弱アルカリ性がむいています。
皮脂に含まれる、脂肪酸というのは、石けんによくにた化学構造をしており、不思議なことに、アルカリ条件では、脂肪酸は石けんに変わり、酸性条件では、石けんは脂肪酸に変わってしまうのです。これによって、汚れであったはずの皮脂が、石けんにかわってしまうのです。
また強力タイプの漂白剤にもアルカリが含まれています。アルカリは強いものになると、たんぱく汚れを分解してくれます。アルカリは強いものほど、目に入れると、目の組織に浸透して角膜が腐食される恐れがあり、危険です。
■漂白剤は使っていいの?
漂白剤は、汚れを酸化し、分解します。人体に漂白剤の酸化剤がとりこまれると、生態の組織を攻撃して痛めつけ、がんなどの原因にもなると考えられています。
けれど、洗剤は、汚れを引っ張りはがし、水の中に汚れ成分を浮かせるだけです。洗剤も細菌やカビなどを引き剥がしますが、殺しはしません。洗った水を捨てても、引き剥がせなかった細菌や、水中に引き剥がされたものの一部が残ってしまいます。衛生面から考えると、漂白剤は非常に効果的で便利なものです。
漂白剤は、汚れを化学的に分解してしまいます。漂白剤の中の化学物質が、汚れを酸化し、破壊してしまうのです。漂白剤の酸化作用は、有機物に限られます。有機物というのは、たんぱく質や、糖分、油脂類などです。具体的には、細菌やカビなどの生物、食べこぼし、皮脂汚れ、排泄汚れです。逆に、有機物ではない、泥汚れ、ススなどには分解がおこりにくく、こちらは洗剤の界面活性剤でないと汚れが落ちません。
漂白剤には、塩素系と酸素系のものがありますが、塩素系のほうが、強い漂白力をもっています。
白いものにしか使ってはいけないのは塩素系のハイターなどです。酸素系のもののなかには、絹や毛などのデリケート素材にも使用できるものがあります。強力にバイキンを殺すということは、人体にもよくないということです。日常の除菌としての使用の場合は酸素系のものをオススメいたします。
■蛍光剤ってなあに?
蛍光剤というのは、衣類の黄ばみを目立たなくする、染料の役目をする化学物質です。
黄ばみというのは、皮脂成分などが繊維の奥まで浸透し、沈着したものです。もしくは、空気中の酸素や太陽光線の紫外線で繊維が酸化されてなる黄ばみもあります。
蛍光剤には、紫外線をあびると、青に発色するような物質が入っているのです。
本来の汚れ、「黄ばみ成分を取ってキレイにする」というのではなく、不必要に化学物質を定着させて、黄色が見えなくするものですので、肌への影響のリスクを避けるためには、使わないほうが無難でしょう。
■重曹を使うほうがいいの?
重曹は、炭酸水素ナトリウムという化学名で、ベーキングパウダーにも使われる物質です。人体にも環境にも比較的やさしい材料ではありますが、万能ではありません。
重曹は、粒で汚れをこすりおとす効果があります。また水に溶かすとアルカリ性になりますので、アルカリのマイナスイオンの反発によって汚れが落としやすくなります。
ただ、重曹のアルカリは、普通の弱アルカリの洗剤や、洗濯石鹸よりもずっと弱いレベルなので、それらと一緒に重曹を使ってしまうと、かえってアルカリ度を薄めてしまうことになります。洗剤や石けんの効果を薄めてしまうことになりますので、重曹と他の洗剤や石けん類を一緒に使うのはやめましょう。
重曹は65度以上のお湯に混ぜると、二酸化炭素の泡が出て、炭酸ナトリウムに変化し、アルカリ度が濃くなるので、汚れが落ちやすくなります。
重曹が汚れおとしに役立つ、最大の理由は、粒と汚れのこすりあわせによる研磨作用です。ですので、ペースト状にしてお鍋などのこびりつきを落とす研磨剤として使用できます。
また、重曹にはにおい消しの効果があります。消臭効果があると、殺菌効果もあるように思いますが、そんなことはありません。水にとけた重曹によって、臭い成分が少しアルカリ側に傾けられたために、におい成分が揮発しにくくなる状態に変わるだけであって、除菌や殺菌の効果はありません。布オムツのお洗濯にご使用の場合は、小型洗濯機をまわす際に、洗剤がわりに重曹を入れて使うことをオススメいたします。
■柔軟材
柔軟材は、油の膜のようなものを作ります。それで、繊維同士が滑りやすくして、すべすべにするのです。
その膜のようなものの作り方としては、マイナスイオンを持つ化学物質を入れることによって、繊維のまわりに油の膜を集めるタイプのものと、粘土のようなつるつるの粒子を洗剤の中に混ぜてしまって、その粒子による膜を、繊維の間にくっつけておくという二つのタイプがあります。
前者が、洗剤のあとに入れるタイプで、後者が、洗剤のなかに、柔軟材が入ってしまっているタイプです。
どちらにしても、油脂の膜をつくるというやり方ですので、布オムツの場合は吸水性が悪くなりますし、また、余計な成分を生地に残すことになりますので、皮膚へのリスクを避けるためには、使わないほうが無難でしょう。
■布オムツ洗濯に使う洗剤
布オムツのお洗濯の場合は、
「手洗い、もしくは小型洗濯機による下洗い」+「いつもの大きな洗濯機で本洗い」
というのが一番いいと思います。
これまで説明したように、
洗剤
石けん
漂白剤
蛍光剤
柔軟材どれも、必要なときがあるかと思います。
汚れはもちろんきちんと落としたいし、真っ白にしたいし、ふんわり仕上げたい。。。
そういうものを最低限の分量と頻度で使用し、きっちり落とすこと。これが重要なのです。(ただ柔軟材は、油分を残すことに意味がありますので、使用しないほうがいい場合があります)
そのため、まず小型洗濯機で下洗いする際には、
1.何もいれない ←もちろんこれが環境には最もよいです。
2.洗剤(合成洗剤もしくは石けん)を入れる←通常のおしっこ、ウンチ
3.重曹を入れる ←通常のおしっこ、ウンチ
4.酸素系漂白剤を入れる ←日光で十分に干せないとき。小型洗濯機をキレイにしたいとき。
5.酢をいれる ←おしっこのアンモニア臭を消したいとき
これらのパターンを、汚れによって使い分けることがいいと思います。そして小型洗濯機で洗濯したあと、もう一度いつもの大きな洗濯機で洗いましょう。
肌に特別トラブルがないようであれば、家族の洗濯物と一緒に洗って大丈夫です。
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<参考文献>
芽ばえ社「子供のアレルギー」
ソフトバンククリエイティブ(株)「地球にやさしい石けん・洗剤・ものしり辞典」
学陽書房「すこやかに生きる暮らしの科学」